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児玉宏 最後のブルックナー

大阪交響楽団のブルックナーシリーズ、最後の9番を聴きました。私が聴き出したのは2006年の7番からですので、3番以外は全部聴いたことになります。初めて7番を聴いた時のことは鮮明に覚えています。それまで朝比奈さんの武骨な力強いブルックナーに慣れていたので、とっても繊細で上品、しかし本質をしっかりとらえた演奏は誠に新鮮でした。もしかしたら、これはすごいかもしれない。そう思い、9年間聴き続けました。その間、大阪交響楽団の技量も確実にアップし、児玉さんの意図することをしっかり受け止めるようになりました。印象に残っているのは2010年の2番。当時シモーネ・ヤングのCDが話題になった曲でもあり、聴く側にも期待感が充満してました。何とも美しい緩徐楽章に息を飲みました。決して暴れることは無いのですが、十分に力強くそして哀愁を安っぽくさせず、高い次元で融合できた演奏です。今回の9番の終楽章に通じるものです。さて、今回の演奏ですが、期待を裏切らない十分に練られた演奏だったと思います。しかしながら、聴く側の期待感が大きすぎたのか、もう少し、という不満も残りました。金管パートに比べ弦の厚みがどうしても足らない感があります。大フィルと比べると明かですね。いつも思うのですが、オーボエの津末さんの演奏は素晴らしいですね。ふくよかな響きですが、決して歌いすぎず上品さを保ち、それでいてしっかり主張している。ここは、大フィルより上かな?さて、ブルックナーが終わって、今後はどんな展開になるのか楽しみです。余談ですが、トランペットには大フィルの篠崎さんがトラで吹いていらっしゃいました。先週のマーラーの3番、お疲れ様でした。

大植英次 マーラー3番 三度目

大植英次指揮大阪フィルハーモニーのマーラーの3番を聴いてきました。2005年のザ・シンフォニーホール、2012年の兵庫県立芸術文化センターに続いて、フェスティバルホールでの演奏です。すばらしい!の一言です。2005年の演奏はお世辞にも最高とは言い難いものでした。オーケストラの技量に問題があり、大植さんとしては意志に反して早いテンポで演奏せざるを得なかった感がありました。また、金管楽器にもかなり問題があり、朗々と歌い上げる終楽章も手放しにいただけるものではありませんでした。但し、舞台裏でのフリューゲルホルンの独奏(秋月さん)は大変見事で感動的でした。2012年の兵芸での演奏は、7年間の大フィルの進化が顕著に感じられる素晴らしいものでした。大植さんの意図するゆっくりしたテンポに大フィルが確実に応じて、不安感の一切無い堂々たる演奏でした。フリューゲルホルンは篠崎さんで舞台上に秋月さんがいたので、終楽章の長いフレーズも大変感銘的。唯一惜しまれたのがホルンです。そして、今回の演奏でそのホルンが素晴らしくなっていました。終楽章の最初の弦楽合奏の後、オーボエが出て続いてホルンが奏でるところ、何ともふくよかで朗々としているのですが、その中に哀愁をしっかりと感じさせる鳥肌ものの演奏です。また、テンポは2012年の時よりさらにゆったりしているのですが、その中に大きな起伏があり、大植さんの感情の動きを大フィルがしっかり受け止めていて、この3年間の進化が顕著に感じられました。大植さんが音楽監督を辞められた後、大フィルは船頭を失った状態かと思えましたが、心配無用のようです。